コピー機の前払保守料は短期前払費用になる?保守サービスは「継続的な役務の提供」と言えるのか

 コピー機の購入などに伴って「年間保守サービス」のような定期保守サービスを利用している事業者も多いと思いますが、前払いで支払う保守料金を法人税や所得税ではどのように取り扱うのかについてお話ししたいと思います。

「前払費用」として資産計上が原則

 コピー機の購入に伴って1年間の保守契約を締結するような場合には、コピー機の代金と一緒に保守料金を支払うことも多いと思いますが、「保守料金をコピー機の取得価額に含める必要があるか?」といえばコピー機の購入代価や付随費用には含まれませんので取得価額にはなりません。

 「それならば、保守料金を支払ったときの必要経費や損金に算入できるか?」といえば、所得税や法人税では、原則としてまだサービスの提供を受けていないものについては必要経費または損金に算入できないため、前払費用としていったん資産計上してから保守期間の経過にあわせて必要経費または損金に算入することになります。

「短期前払費用」に該当するのか?

 でもそうすると気になるのが、所得税基本通達37-30の2と法人税基本通達2-2-14に規定されている「短期前払費用」についてです。短期前払費用とは、前払費用であったとしても支払日から1年以内に役務の提供を受ける場合には、継続適用を要件に支払った日の属する年分または事業年度の必要経費・損金に算入することが認められるというもので、短期の前払費用については「いちいち期間按分しなくてもよい」ということになります。

(短期の前払費用)
37-30の2 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下この項において同じ。)の額はその年分の必要経費に算入されないのであるが、その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、これを認める。

所得税基本通達

(短期の前払費用)
2-2-14 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。

法人税基本通達

 ただし、短期前払費用を適用するにあたって気をつけなければならないのが、この規定を適用できるのが「継続的に役務の提供を受けるため」の支出に限定されていることで、具体的には、地代家賃やリース料、保険料のように「等質等量」の役務提供でなければならないことです(参考:東京地裁、平成19年6月29日判決)。したがって、例えば税理士の顧問料を1年分前払いしたとしても等質等量な役務の提供ではない(役務提供の内容がその時々の状況に応じて変わる)ため短期前払費用の要件を満たしません。

 コピー機の保守契約について考えてみると、ある月は修理をしてもらったものの、別の月は点検だけだったり、また別の月は何もしなかったりと、サービスの内容が毎月一定とは限りません。そのため、個人的には、等質等量な役務提供といえるかについては慎重な立場をとっています。

国税庁が公表したQ&A

 ところが、国税庁が平成30年10月に公表した「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」の問7では、「1年分の保守料金を短期前払費用として処理した」という前提で仕入税額控除の解説がされています。

 悩ましいQ&Aであり、契約内容によっては短期前払費用として処理する余地も考えられるのかもしれません。しかし、コピー機の保守契約は、役務提供の内容や頻度が毎月一定とは限らず、等質等量な役務提供とは言い切れない面があります。そのため、個人的には、短期前払費用として支払時に全額を必要経費または損金に算入するよりも、原則どおり前払費用として資産計上し、保守期間の経過に応じて期間按分する処理を推奨しています。

関連記事

  1. [税務訴訟解説5]外注先の塗装工への報酬が「給与等」に該当すると…

  2. 値引き販売はなぜ危険?売上が増えても利益が減る理由を税理士が解説…

  3. [税務訴訟解説9]自己が代表である法人への外注費が必要経費に当た…

  4. 税務調査とは?拒否できるのか・調査頻度・対応方法を税理士が解説

  5. 税理士試験ってどんな試験?科目合格制・勉強の特徴・実務との関係を…

  6. 会社設立で必要な税務手続きとは?届出期限と注意点を税理士が解説

  7. 損益分岐点売上高とは?固定費と粗利率から黒字に必要な売上を計算す…

  8. [税務訴訟解説8]不動産貸付業で発生した債務の免除益が一時所得に…

PAGE TOP