税理士試験ってどんな試験?実務に携わる現役税理士が税理士試験について思うこと

 税理士試験について書かれている書籍やWebサイトはたくさんありますが、商業的な目的(?)から実態とは違った形で説明されていたり、受験したことがない人が想像(?)で書いているものも見受けられます。そこで今回は実際に税理士試験に合格し、長く実務に携わっている者という立場から税理士試験について書いてみたいと思います。

税理士試験ってどんな試験?

 税理士試験はその名のとおり税理士になるための試験で、毎年8月に実施、12月に合格発表があるのですが、試験科目は次のように大きく「会計科目」と「税法科目」に分けられています。

 このように見ると受験科目が多くて大変だなと感じるかもしれませんが、実は全ての科目に合格しないと税理士資格が取得できないわけではありません。

 会計科目の2科目は必修なので両方に合格しないといけませんが、税法科目は所得税法と法人税法のどちらか1科目以上を含む3科目(「消費税法と酒税法」「住民税と事業税」は両方を選択することができません)の合計5科目に合格すればよいことになっています。

 したがって、税理士試験に合格していても例えば所得税法や相続税法は選択しなかったので基本的なことすら勉強したことがないなんて可能性もあるわけです。とはいえ、この点については、税法三科目を通して税法の考え方を身に着けたら、その後は「法人の税務を専門にしたい」「資産税を専門にしたい」など自分が理想とする税理士像と照らし合わせながら「必要なことをどんどん勉強してください」という意味だと理解しています。

 このことは税法にとどまらず、例えば法人を専門とする税理士ならば会社法は必須ですし、資産税を専門とする税理士ならば民法などもどんどん学んでいかないといけませんので、税理士を志す以上は「長い長い勉強の道」から逃れることは出来ないということだと思います。

税理士試験の特徴

 このような税理士試験ですが、司法試験や公認会計士試験、弁理士試験といった他士業の試験や大学入試などと比較して次の二点が特徴的だと思います。

(特徴1) 「科目合格制」であること
(特徴2) 「勉強が得意」よりも「根気」が重要

(特徴1) 科目合格制であること

 税理士試験では上記のとおり合計5科目に合格しないといけませんが、一度に全科目を受験しないといけないわけではなく、例えば毎年1科目ずつ5年計画で受験することもできます。

 このため税理士試験は司法試験や公認会計士試験などとは異なり「社会人でも受験しやすい試験」だと言われており、10年以上かけて合格される方も珍しくありません。

 それではどのような順番で受験する人が多いのかと言えば、選択必修である所得税法と法人税法を学習するには最低限の会計知識が必要なため、最初に会計科目を受験して、合格後に税法科目に進む受験生が多いです。そのため税法科目の受験生の多くは既に会計科目に合格済みである、既に「選抜されたメンバー」であるため、会計科目よりも税法科目の方がハイレベルな争いになるとも言われています。

 ちなみに私の税理士試験での結果はこんな感じでした。

1年目(2000年) 〇簿記論 合格、〇財務諸表論 合格、×消費税法 不合格
2年目(2001年) 〇消費税法 合格、×固定資産税 不合格
3年目(2002年) 〇所得税法 合格、×固定資産税 不合格
4年目(2003年) 〇法人税法 合格

 このように説明すると「1科目ずつ受験できるなんて、とても親切な試験だな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、ここにちょっとした誤解がありまして、受験勉強に専念されている受験生であっても5科目を一度に受験する方はほとんどおらず、多くの方が1年に1~2科目程度に受験科目を絞っています。

 税理士試験の合格率は各科目概ね10~15%になっており、他の受験生が1~2科目程度に絞って勉強する中、多科目(例えば3科目以上)に同時合格することは容易なことではありませんので、科目合格制は親切な制度であるのと同時に、税理士試験の受験期間が長期化しやすい原因にもなっています。

 2、3年程度の短期間で合格したい気持ちはよくわかりますが、その一方で、受験科目を絞って計画的に勉強した受験生が、着実に合格科目を積み上げていっているようにも思いますので、事前の受験戦略がとても重要な試験だといえます。

 ちなみに複数の大手受験予備校が税理士試験の「標準学習時間」を公表していますが、税理士試験合格者の間では「あの学習時間での合格は不可能」と言われており、私も少なくともその2倍~3倍は勉強する必要があると思っていますので、このあたりの正確な情報収集も受験戦略を考える上では大切です。

(特徴2)「勉強が得意」よりも「根気」が重要

 多くの方のとって受験と言えば真っ先に高校受験や大学受験を思い浮かべるかもしれません。こういった試験では、優秀な同級生がいて「どう考えても太刀打ちできる気がしない」と感じた経験があるかもしれませんが、税理士試験は「勉強が得意」よりも長期間にわたって努力し続ける「根気」が重要な試験であるため少し事情が異なります。

 なぜかと言えば、税理士試験では多くの受験生が所得税法と法人税法を筆頭とした税法科目に苦しむ傾向にあるのですが、税法科目の出題にその理由があります。

 税法科目では計算問題と理論問題が出題されるのですが、計算問題では受験生は税額計算のための知識を一通り学んだら、あとは税額を早く正確に計算するための練習をひたすら繰り返します。何度も何度も繰り返して練習し、最終的にはほとんど何も考えなくても正確な税額計算ができるくらいまで計算技術を高めていきます。また、理論問題では法解釈などの出題は少なく、税法の条文を丸暗記させる出題が多いため、受験生は来る日も来る日も条文を読み込んで、条文をすらすらと諳んじられるようしていきます。

 もちろんそれでも勉強が得意な人の方が有利かもしれませんが、毎日頑張って訓練すれば確実に点数を伸ばしていけますので、税理士試験は必ずしも勉強が得意な人が合格する試験ではなく、根気よく努力した人が合格する試験だと思います。

税理士試験と実務との関係

 科目合格制による受験期間の長期化や徹底的な反復練習、条文の丸暗記には批判の声も多く、科目合格に有効期限を導入するべきだといった意見や、法解釈などを問う出題にすべきだとの意見も聞かれます。

 確かに長期間にわたる受験勉強はなかなか辛いものですし、実務で出くわす実際の事例では法令をどのように解釈するかといった「思考能力」が重要になるため、税理士試験で培った技術や知識だけでは十分だとは言えません。

 でも、だからと言って税理士試験が無駄だとは思いません。私自身、 科目合格制であるがために一科目一科目に十分な時間をかけてじっくりと勉強することができ、計算問題を繰り返し反復練習し、法規集がボロボロになるまで徹底的に条文を読み込んだことによって、税法の基礎が頭に刷り込まれたと感じています。そして、このようにして刷り込まれた税法の基礎は複雑な案件を取り扱う上でも非常に役に立っていると実感しています。

 税理士試験は長丁場で決して容易ではありません。10年以上かけて合格する人も決して珍しくない試験です。受験期間が長期間になってくると挫けそうな気持になるかもしれませんが、受験勉強を通じて身に着けたことは将来の実務で必ず役に立つものだと思います。これをお読みの方の中には税理士試験の受験生もいらっしゃるかもしれませんが、合格を勝ち取れるよう頑張ってください!

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