「20万円基準」と「60万円基準」の違い

「20万円基準」と「60万円基準」の違い

 一つの修繕や改良に修繕費と資本的支出が混在している場合、その内容を修繕費と資本的支出に区分するのはなかなか難しいため、実務上では「20万円基準」や「60万円基準」といった方法がよく使用されますが、これらの方法について正しく認識されてないケースもあるようですので詳しく解説していきます。

資本的支出とは?

 法人が建物や車両などの減価償却資産を取得した場合、減価償却によって各事業年度の損金になるため、例えば300万円で車両を購入したとしても、使用開始時に全額が損金になるわけではなく、車両の耐用年数にわたって少しずつ損金になっていきます。

 では、購入した車両の内装を変えたりパーツをアップグレードした場合の費用はどのように取り扱うのでしょうか?このような内装工事やアップグレードは単なる故障の修理などとは違って、車両の価値を高めるためのものですので、かかった費用は工事時(アップグレード時)の損金ではなく資産(資本的支出)として取り扱い減価償却することになります。

 ところが、故障個所の修理のついでにパーツをアップグレードしたような場合には話が若干ややこしくなります。例えば購入した車両が故障し、故障したパーツを交換するついでに元のパーツよりも品質や性能の高いものに交換した場合、かかった費用に修繕の部分とアップグレードの部分(資本的支出)が混ざってしまうため、修繕部分は修繕費、アップグレード部分は資本的支出部分として区分しなければなりません。

資本的支出と修繕費の区分

 このように一つの修繕や改良に修繕部分と資本的支出部分が混ざっている場合には、かかった費用を修繕費と資本的支出に区分しないといけないわけですが、法人税法施行令では「使用可能期間を延長させる部分に対応する金額」「価額を増加させる部分に対応する金額」(両方に該当する場合は多い金額)は資本的支出に該当し、それ以外の部分が修繕費になるとしています。

法人税法施行令
第百三十二条
内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その内国法人のその支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額
二 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

 とはいえ実務上は「使用可能期間を延長させる部分」や「価値を増加させる部分」の金額を計算することが簡単でないことも珍しくありません。そこで修繕や改良の金額が少額な場合には、ややこしい調査や計算などをせずに簡便な方法によって修繕費と資本的支出に区分することが認められています。これが「20万円基準」や「60万円基準」と呼ばれるものです。

「20万円基準」と「60万円基準」

 「20万円基準」とは、一つの修繕や改良が20万円未満のときは、たとえ修繕費と資本的支出が混ざっていたとしても、いちいち修繕費と資本的支出を区分することなく全額を修繕費とすることができるというルールです。したがって、故障したパーツをより高品質なものに交換したとしても20万円未満であれば、それ以上は何も考えずに全額を修繕費として損金にすることができます。

 これに対して「60万円基準」とは、60万円未満で修繕費と資本的支出の区分が明らかではないものは修繕費として損金にすることができるというものです。したがって「明らかに資本的支出」という部分については、たとえ金額が60万円未満であったとしても60万円基準は適用できないことに注意が必要です。

 例えば80万円で修繕や改良を行って、そのうち30万円は明らかに資産の価値を高めるためのコスト、残りの50万円は資本的支出か修繕費が明らかでないという場合には、30万円は資本的支出として取り扱い、残りの50万円に対して60万円基準を適用して修繕費にすることができます。

「10%基準」も明らかではない金額に対して適用可能な方法

 なお、「60万円基準」の他に「10%基準」と呼ばれるものがあり、修繕費と資本的支出の区分が明らかではないもので、金額が修理や改良の対象となった固定資産の前期末取得価額のおおむね10%相当額以下であるものについては、修繕費として損金にすることが認められています。

 ただし、この方法も 「60万円基準」 基準と同様に、修繕費と資本的支出の区分が明らかではないものが対象ですので、明らかに資本的支出とわかる金額については適用できません。

※この記事の内容は、公開時の法令等に基づくものです。公開の時期については、記事の冒頭でご確認ください。

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