「翌年1月分の家賃を12月に受け取ったらどうする?」間違いやすい不動産所得の収入計上時期

 こんにちは!浦安の税理士たちばなです。所得税は1月~12月分の所得に対して確定申告をしなければいけませんが、翌年1月分の家賃を12月に受け取ったら、12月と翌年1月のどちらの収入として申告するのでしょうか?簿記を学ばれた方ならば「1月分の家賃なのだから1月の収入」と思われるかもしれませんが、所得税では簿記とは考え方の違う部分もあるので注意が必要です。

所得税では「契約等による家賃の支払日」が原則

 簿記では12月分の収入は12月に記帳するのが普通なのですが、所得税では次の国税庁のタックスアンサーにあるとおり、「契約による家賃の支払日等」の収入とするのが原則です。

不動産を賃貸したことにより収受する家賃、地代、更新料などは、その金額を不動産所得の総収入金額に算入することとなりますが、その収入に計上すべき時期は、原則として次のとおりです。

地代・家賃、共益費
地代・家賃、共益費などは、その支払方法についての契約内容により原則として次のようになります。
(1) 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
(2) 支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日
 ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日
(3) 賃貸借契約の存否の係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除きます。)に係る判決、和解等により不動産の所有者等が受け取ることになった係争期間中の賃貸料相当額については、その判決、和解等のあった日
国税庁タックスアンサー「No.1376 不動産所得の収入計上時期」より

 したがって、例えば賃貸借契約によって「2022年1月分の家賃は2021年12月に支払う」とされている場合には、2021年の家賃として所得税が課税されることになります。このことを知らずに2022年の収入として所得税の確定申告をしてしてしまうと、税務署から「2021年分の所得税額が過少ですね」と指摘されてしまうかもしれないので注意が必要です。

「貸付期間の収入」とすることが認められる場合

 では、不動産所得の計算では貸付期間の収入とすることが全く認められないかと言えばそんなことはなく、次のように継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなどの一定の要件を満たす場合には、貸付期間の収入とすることも認められています。つまり、翌年1月分の家賃の支払日が12月であったとしても、翌年1月の収入としてOKということです。

(貸付期間の収入金額とするための要件)
1. 不動産等の貸付が「事業的規模」の場合
(1) 帳簿書類を備えて継続的に記帳し、それに基づいて不動産所得の金額を計算していること
(2) 不動産等の賃貸収入の全てについて、継続的に貸付期間に応じて総収入金額を計算し、前受収益や未収収益の経理を行っていること
(3) 1年超の期間の賃貸料収入は、前受収益・未収収益の明細書を確定申告書に添付していること

2.不動産等の貸付が「事業的規模ではない」場合
(1) 帳簿書類を備えて継続的に記帳し、それに基づいて不動産所得の金額を計算していること
(2) 1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸収入の全てについて、継続的に貸付期間に応じて総収入金額を計算し、前受収益や未収収益の経理を行っていること
※1年超の期間の賃貸料収入は、原則どおり「契約による賃料の支払日」等の収入になります

 このように所得税は不動産所得の収入時期について「契約等による家賃の支払日」を原則としつつも、一定の要件を満たす場合には会計と同様に「貸付期間」の収入とすることも認めています。したがって、複式簿記で記帳を行っているような場合にはあまり問題にはならないと思いますが、そうでない場合は不動産所得の収入時期がいつになるのかきちんと確認しておく必要があります。

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