こんにちは!浦安の税理士たちばなです。事業をしていると定期的にやってくるのが税務調査です。ある日突然、税務署や国税局から電話がかかってきて「何も悪いことをしていないのになぜ?」と思った経営者も多いのではないでしょうか?なんとなく怖いイメージのある税務調査についてお話したいと思います。
税務調査って何?
税務調査と聞くと少し古い映画ですが伊丹十三監督の『マルサの女』(1987年)を思い浮かべる方もいるかもしれません。突然スーツを着た大勢の国税職員がやってきて、令状を呈示すると会社や自宅にズカズカと入り込んできて捜索を始める。
しかし、このような調査は一般的な税務調査とは異なるもので、国税犯則取締法に基づく「強制調査」とよばれるものです。強制調査は悪質で金額の大きな脱税に対して行われるもので刑事事件になることも多いですが、正しく納税しようとしていれば通常は関わることがないものだと思います。
これに対して広く一般的に行われている税務調査が「任意調査」とよばれるもので、納税者に質問をしたり、帳簿書類を検査したりして申告内容などが正しいかをチェックしていきます。令状を持った国税職員がやって来て、強制的な捜索や差し押さえは任意調査では行われません。
税務調査は拒否できるのか?
では、任意調査は「任意」なので納税者は調査を拒否できるのでしょうか?結論から言いますと、拒否できません。
これは国税通則法によって、国税職員には税金の調査のために必要があるときは、納税者等の関係者に質問したり、帳簿書類やその他の物件を検査したりすることが認められているからで、これを国税職員の質問検査権といいます。そして、質問に対する答弁を拒否したり虚偽の答弁をした場合や検査を拒んだ場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。つまり、「任意」調査という名称であっても協力しないといけないわけです。
(国税通則法)
第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者
ただし、どうしても都合が悪いなど合理的な理由がある場合には、調査の時期を変更してもらえないか国税職員に相談してみるとよいでしょう。
税務調査が行われる頻度
それでは税務調査はどのくらいの頻度で実施されるのでしょうか?これについては単純には何とも言えないのですが、国税庁の発表した資料から計算してみると法人税の申告には3.4%、所得税(事業所得)の申告には1.0%の確率で税務調査が実施されていることがわかります。したがって「平均すると」法人の場合は約30年に1回、個人(事業所得)の場合は約100年に1回の頻度になります。
「意外と少ないな」と思われるかもしれませんが、所得金額が大きい場合や過去の税務調査で間違いを指摘されている場合、課税売上高が1000万円以下ぎりぎりの消費税免税事業者、その他何か目立つことがあるようだと確率がグンと上がるようですので、いずれにしても正しい申告を心がけておくことが大切です。
税務調査があったらどのように対応すべきか?
税務調査を担当する国税職員を調査官といいます。そして同じ調査官であっても入念に書類を調べる人、話上手でいろいろと聞き出そうとする人、税法に精通した理論派の人、ゴリゴリと力ずくで押してくる人など様々な人がいますが、納税者としては誠意を持って対応し、質問された内容には「正確」かつ「簡潔」に回答することが鉄則だと思います。
早く終わらせたいからといって記憶の曖昧なことを適当に答えてはいけません。わからなければきちんと調べてから答えることをおすすめします。また、ちょっとマズイことを聞かれたからつい嘘をついてしまうなどは論外です。調査官は税務調査のプロですので、嘘や辻褄の合わないことには気が付くものです。嘘や辻褄の合わないことがあるとより詳しく調べられますし、何より調査官からの信頼を失います。
また、ときどき見かけるのが調査官から聞かれたこと以上にいろいろ話してしまう人です。もちろん何もやましいことが無いから饒舌になるのでしょうが、「無駄話から意図しない経理ミスが発覚」なんてこともありますので、聞かれたことに対してわかりやすく簡潔に回答することが上手な対応と言えるでしょう。
調査官も普通の人間です。嫌な顔をしたりせず誠意を持って対応し、専門的なことについては税の専門家である税理士に任せることが大切だと思います。
千葉県浦安市で税理士事務所を開業。都内税理士事務所及び事業会社で国内税務、国際税務、財務会計、管理会計、経営企画などの業務に従事し、東京都千代田区で独立。令和4年5月千葉県浦安市に事務所を移転。創業、起業のサポートに尽力。
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