経理業務では、数字の「違和感」に気づくことがとても大切です。
その違和感は、入力ミスや処理漏れを発見するきっかけかもしれません。あるいは、経費が想定以上に増えている、利益率が悪化している、売掛金の回収が遅れているといった、経営上の変化を知らせるサインかもしれません。誰かの不正を見つけるきっかけになることもあります。
これまで税理士としてだけではなく、事業会社でも長く経理の仕事に携わってきましたが、そのなかで経理業務に慣れるほど違和感に鋭くなる人がいる一方で、反対に、鈍感になってしまう人がいると感じています。
これは、単純に経験やセンスだけの問題ではなく、数字を見るときの「意識」の違いから生まれるものだと思います。そのため少し意識を変えるだけで、誰でも違和感に気づきやすくなると考えています。
経理業務に慣れると鈍感になる理由
経理業務では、日々多くのデータを取り扱います。今ではかなりの部分が電子データになっていることも多いですが、少し前までは経理部門に請求書や領収証などの大量の書類が送られてきて、データの入力処理に追われている経理スタッフも多かったと思います。
また、電子データになっていたとしても、データ量自体が減るわけではないので、請求書や領収証を1件ずつ入力するたびに、「この金額は適正だろうか」「先月と比べてどうだろうか」と細かく考えていたら、なかなか仕事が終わりません。
そのため、経理の仕事に慣れてくると、資料を素早く確認して勘定科目を判断し、次々と入力していくようになります。いわば感情を押し殺した「経理マシーン」のような状態ですが、業務のスピードと正確性を高めるためにはやむを得ない部分もあります。
しかし、「作業」に集中していると、数字の違和感には気づきにくくなります。私自身も経験がありますが、特に経理のミスをなくそうとすればするほど、「請求書の数字と登録した数字が一致しているか?」「支払先を間違えていないか?」といった細かな部分のチェックで手一杯になってしまい、別の角度からチェックしたり、全体を見ることが難しくなります。
また、業務に追われていると、せっかく小さな違和感を覚えても、「早く終わらせないと」と焦ってしまい、無意識に正常性バイアスが働いて、「気のせいだ」と思いがちです。
入力後に一度立ち止まって数字を見る
そのため、違和感に気づくためには、業務が一息ついたところで一度立ち止まって数字を見ることが大切です。例えば、次のような視点で見てみます。
- 売上高、売上原価(原価率)、営業利益(営業利益率)が、前年や前月と比べて大きく変化していないか
→変化している場合、その理由を把握しているか? - 予算との乖離が大きい部分はないか
→大きく乖離している部分がある場合、その理由を把握しているか? - 月次推移を確認して大きく増減している「勘定科目」や「取引先」はないか
→大きく増減している場合、その理由を把握しているか?
大切なのは、すべての数字を細かく分析することではありません。細かな部分のチェックに慣れてしまった目を一度リセットして、新しい目で全体を眺めてみることが大切です。そこから何か発見があるかもしれませんし、『そういえば、今月はいつもと違う請求書があった』と思い出すかもしれません。詳しく調べてみると、ミスや経営上の問題を見つけるきっかけになることもあります。
経理業務の目的は、データを正しく入力することだけではありません。入力した数字を通じて、会社で起きている変化を見つけることも大切な役割です。作業を素早く進める時間と、数字を意識して見る時間を分ける。その習慣が、経理のミスを減らし、経営に役立つ気づきを増やしてくれるのではないかと思います。

千葉県浦安市の税理士。
浦安市を拠点に、税務顧問、決算申告、会社設立後の税務、法人成り、月次決算の早期化、経理体制づくり、事業計画の策定、資金繰り相談、経理の自動化・効率化などを支援しています。
当事務所のより詳しい情報は、「浦安の税理士|橘隆行税理士事務所」のトップページをご覧ください。

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