昨年から猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症ですが最近では一部の国でワクチン接種が開始されるなど明るい兆しも少しずつ見え始めてきましたがまだまだ落ち着くまでには時間がかかりそうです。
そんななか政府などからは感染拡大を抑え込むために在宅勤務の推進が呼びかけられていますが、今月15日に国税庁より『在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ』が公表されましたのでその内容を解説したいと思います。
この記事の目次
基本的な考え方
従来より従業員が業務のために負担した費用について会社が実費弁償する場合には給与として課税されないこととされていましたが、今回のFAQでも在宅勤務により発生した費用の実費弁償については給与課税しないことが明かにされています。
在宅勤務手当(FAQ-問1)
ポイント!
実費相当額を精算する場合 ⇒ 給与として課税されない
渡切りで支給する場合 ⇒ 給与として課税される
在宅勤務によって従業員は業務で使用する電話料金や電気代などを支払うことになりますが、会社が業務使用分の実費相当額を支給する場合には給与として所得税等は課税されません。ただし「一律に毎月〇〇円支給し、使用しなかったとしても返還不要」(渡切りでの支給)といったようなものについては給与として課税されるので注意が必要です。
PCなどの支給(FAQ-問2)
ポイント!
従業員に貸与する場合 ⇒ 給与として課税されない
従業員にあげる場合 ⇒ 給与として課税される
在宅勤務に必要なPCなどについてはそれが貸与であれば給与として課税されることはありませんが、所有権が移転している(従業員にあげた)場合には給与課税されます。
レンタルオフィス(FAQ-問7)
ポイント!
従業員が会社に領収書等を提出する場合 ⇒ 給与として課税されない
渡切りで支給する場合 ⇒ 給与として課税される
従業員が勤務時間内に自宅近くのレンタルオフィス等で在宅勤務をして在宅勤務に通常必要な費用を支払った場合で、会社に領収書等を提出して精算したときは給与として課税されません(従業員がレンタルオフィス代を立替え払いしたのち会社と精算する方法と、最初に会社が従業員に仮払いしその後レンタルオフィス利用してから会社と精算する方法のいずれでも構いません)。
業務使用分の計算方法
従業員が負担した費用のうち、通信費や電気料金のように在宅勤務分とその他の分が混ざっているものについては在宅勤務分を次のように計算します。
通信費の業務使用部分(FAQ-問4、5)
ポイント!
基本使用料、インターネットネット通信料 ⇒ 業務利用部分を合理的に計算する
通話料 ⇒ 通話明細等によって業務部分の通話料金を確認する
電話の基本料金やインターネット通信料については合理的な方法(例えば次の【算式】の方法)で業務使用部分を計算します。一方、電話の通話料は原則として通話明細等によって業務使用分を確認しますが、営業担当や出張サポート担当等のように業務で電話を使う機会が多い場合には【算式】による計算も認められます。
【算式】
※ この算式ではなくより精密な方法で計算することも認められます
【例】9月のスマホ料金 4,800 円を支給した場合(在宅勤務15日)
(内訳)基本使用料3,000 円(3GBまで)
データ通信料1,000 円(3GB超過分)
業務使用に係る通話料800 円(明細から業務使用部分を確認)の場合
電気料金の業務使用部分(FAQ-問6)
ポイント!
基本料金、使用料 ⇒ 業務利用部分を合理的に計算する
電気料金の業務使用部分は合理的な方法(例えば次の【算式】の方法)で業務使用部分を計算します。
【算式】
※ この算式ではなくより精密な方法で計算することも認められます
まとめ
今回国税庁から在宅勤務手当のFAQが公表されたことによってこれまで曖昧だった取り扱いが明確になりました。しかし、一人一人の従業員の通信費や電気料金等についてそれぞれ個別に計算することは非常に煩雑で相当な手間とコストがかかることが想定されます。
したがって今後は例えば「在宅勤務一日当たり〇〇円までは非課税」といったようなもう一歩踏み込んだ取り扱いを認めるよう期待したいところです。
お問い合わせはこちら2003年、税理士試験5科目合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、所得税法、消費税法)。都内会計事務所や事業会社で税務会計業務や経営計画業務に携わる。「気軽に相談できる税理士」をモットーに東京都千代田区に税理士事務所を開設。ビジネス税務に強く、また、創業や法人成りのサポート、クラウド会計の導入支援を得意とする。
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