AIによって税理士は消える職業?

 最近、税理士や弁護士など士業の方と話をすると話題になるのがAIについてです。少し古い研究ですが2015年に発表された野村総研とオックスフォード大学の共同研究によれば税理士業務のAIによる代替可能性は92.5%だそうです。税理士からするとちょっと衝撃的な割合ですが、AIと今後の税理士業界について実務の現状を踏まえながらお話ししたいと思います。

士業の調査結果と傾向

 士業といいますと税理士以外にも、弁護士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士などがありますが、野村総研とオックスフォード大学の共同研究によれば、税理士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士のAIによる代替可能性は約80%~90%と軒並み高いのに対して対して弁護士や中小企業診断士についてはほぼ0%という結果になっていました。

 「弁護士や中小企業診断士の業務の方が難しいから?」と言えば、おそらくそういうことではなく、いずれの職業も高度な専門知識が要求される難しい仕事です。しかし、いかに専門家であっても知識量だけではAIに太刀打ちできず、大切になってくるのは依頼者とのコミュニケーションだと思います。「法律や経営の相談」「裁判所への出廷」などは専門知識の他にコミュニケーションが必要になってくるためAIによる代替可能性が低いと考えられているのでしょう。

 「じゃあ税理士にコミュニケーションは不要なの?」と聞かれると、この共同研究では「書類から帳簿を記帳して申告書を作るだけ」と思われているのかもしれません。

税理士業界とIT技術

 私が税理士の業界に入ったのは2000年ですのでちょうど今から20年前のことです。当時は中小の税理士事務所と言えばお客様から入出金台帳や領収書などを預かって複式簿記のルールで会計ソフトに入力するいわゆる記帳代行業務がメインでした。そのため税理士事務所には多くの補助スタッフが在籍していることが一般的でした。

 そして現在は?と言えばクラウド会計が発達し、記帳代行業務が大幅に減少したという税理士事務所がある一方で、従来のように記帳代行業務がメインという税理士事務所が依然として多数派であるように感じます。

 この数十年を見ていると「そろばん+手書き」→「電卓+手書き」→「会計ソフト」→「クラウド会計」へと進歩にともなって税理士事務所の補助スタッフの仕事は減り続けています。これについては会社の経理部についても同じで、私が以前働いていた製薬会社では「現在4人で行っている仕事を30年前は20人で行っていた」と聞かされたことがあります。実に8割減です…。

 このように今はAIばかり目がいきますが、新しい技術の導入に伴う業務の減少は今に始まった話ではないということです。そしてAIについても会計ソフトと同様に「どうやって利用するか」が大切になってくると思います。

残る税理士業務

 「どのような税理士業務が残るのか?」を考えるにあたっては先ほど挙げたコミュニケーションに注目しなければなりませんが、税理士業務でコミュニケーションが必要な業務といういと税務相談や各種コンサルが真っ先に挙げられます。これらはお客様がどんな課題に直面しているかを分析して改善策を提案する仕事ですのでコミュニケーションが不可欠です。

 また、税務代理や税務署類の作成は将来的にはAIが行う部分も出てくるかもしれませんが、申告等の内容をお客様に正しく説明して、さらに複数の選択肢がある場合にはメリット・デメリットなどを正しく理解していただく必要があるので、やはりコミュニケーションが大切になります。

主な税理士の業務 コミュニケーションの重要性
税務代理(申告の代行等)
税務署類の作成(申告書の作成等)
税務相談
記帳代行 ×
会計コンサル
融資コンサル
経営コンサル

未来の税理士事務所の姿とは?

 このように考えてみると前出の野村総研とオックスフォード大学の研究ではAI代替可能性が高いと指摘されているのは「記帳代行業務」と「税務代理」「税務署類作成」の一部のように感じます。ただし、この部分をメインにしている税理士事務所が少なくないため税理士業界への影響は小さくないでしょう。

 とはいえAIの活用は税理士業界にとどまらず世界的に進んでいきますので税理士業界だけが拒むことはできません。そのため私たち税理士は今後コミュニケーションを必要とする業務により注力していく必要があるでしょう。そしてそのためには「専門的な知識」と「コミュニケーション」の両方を併せ持った税理士の実力が問われる時代になると思います。

 単純業務についてはAIに任せて、判断が必要なものについて税理士が検討を行いお客様にわかりやすく説明する。そんな今までよりももっとお客様の方に目を向けることが未来の税理士事務所の姿ではないでしょうか?

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