海外取引する方は移転価格をチェックしていますか?

 先日、知り合いから会社を設立したので相談させて欲しいと連絡がありました。本当は当事務所で顧問契約を締結してサポートさせて頂きたかったのですが、遠隔地のうえに国際取引を含む複雑なビジネスだったため現地の税理士にサポートしてもらった方が良いと考えて、当事務所では会社設立手続きのチェックとビジネス全体の初歩的な税務リスクの評価だけをさせて頂きました。

 そのなかでご説明したものに「移転価格税制」というものがあるのですが、その知り合いは「こんなことは全く考えもしなかった」と驚いていたので、今回は「移転価格税制ってなに?」という触りの部分を解説したいと思います。

法人税などの税率は国によって異なる

 日本では会社の利益に対しては「法人税」「法人事業税」「法人住民税」などの税金が課税されますが、これらの税率は合計して約30%程度(資本金などによっては下がる場合があります)になります。では「海外の税率は?」といいますと事情が異なります。

 以下は財務省のウェブサイトで公表されている資料ですが、これを見ると日本の法人税率が諸外国よりも高いことが分かります。

 ではこれらの税率に具体的な金額を当てはめて考えてみますと、法人税率30%の日本で1億円の利益(課税所得)の場合には1億円×30%=3,000万円の納税が必要ですが、19%のイギリスであれば1億円×19%=1,900万円の納税で良いということになります。

海外に関連会社がある場合

 ところで私に相談をしてきた知り合いは、日本国内で製造した商品を海外の現地法人(子会社)に輸出し、海外で販売するというビジネスモデルを模索しているようでしたが、このようなケースでは実は日本から海外の現地法人への輸出価格を変えることによって全体の納税額が変わってしまいます。

 例えば製造原価300万円の製品を海外の顧客に500万円で販売する場合には利益は200万円になるわけですが、現地法人への輸出価格を300万円にすれば利益の200万円は全額現地法人の利益になり、輸出価格を500万円にすれば逆に200万円の利益は全て本社の利益になります。

 そして、日本の税率が30%、外国の税率が20%であるとすれば、次のように利益を全て海外の現地法人に帰属させたら全体の税額が少なくなるというちょっとおかしな現象が発生します。

移転価格税制とは?

 このように海外の関連会社との取引価格を変更することによって各国での納税額を調整できてしまうわけですが、当然ながらこのように恣意的な利益調整は認められません。そして、こういった利益調整を防止するために設けられているのが移転価格税制で、移転価格税制では海外の関連会社(国外関連者)との取引については通常の価格(第三者と取引する場合の価格、「独立企業間価格」といいます)で行われたものとみなして税額を計算することになっています。

 つまり、先ほどのケースで言えば実際の輸出価格が300万円又は500万円であったとしても、通常の価格が400万円である場合には、400万円で輸出したものとみなして法人税等の税額を計算することになります。

 以前は移転価格税制については大企業だけが気をつけていれば良いと考えられていましたが、近年では規模の小さな会社に対しても移転価格税制の税務調査が行われています。国外関連者との取引がある場合には、取引価格が適切かどうかいま一度チェックしてみてはいかがでしょうか?

 なお、独立企業間価格の算定については非常に専門的な内容のため、疑問がある場合には移転価格税制を得意とする税理士に相談されることをお勧めします。

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