国外不動産を使った節税が税制改正でNGに

国外不動産を使った節税が税制改正でNGに

 こんにちは!市ヶ谷、九段下の税理士たちばなです。先日、ある大手不動産会社から当事務所に「富裕層への節税の提案として米国の中古住宅を使った方法があるのですが、顧問先を紹介してもらえませんか?」という問い合わせがありました。

 確かに米国の中古住宅を利用した節税があることは知っていましたが、今後は使えなくなる予定のため少し驚きました。というものこの方法、あまりに有名になり過ぎて税制改正によって2021年以降は制限がかけられることが決まっているからです。

 ということで今回は、米国の中古住宅を利用した節税スキームと税制改正でその節税スキームがどのように封じられたのかを解説します。

これまで利用されてきた節税スキーム

 米国の中古住宅を利用した節税スキームは、高額所得者で日本の高い税率(所得税と住民税を合わせた最高税率は55%。復興特別所得税を除く)が適用される富裕層個人の節税を狙ったものですが、主に次に掲げる米国不動産と日本の税制の四つの特徴を利用したものになっています。

(1)米国では不動産のうち建物価格の占める割合が高いものが多い
(2)米国ではメンテナンスが行われていれば木造住宅であっても価格が下がりにくい
(3)日本の税法では中古木造住宅の耐用年数が短い
(4)日本の所得税と住民税は総合課税の最高税率が55%であるのに対して長期譲渡所得(※)による分離課税が20%である
(※)譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物の譲渡所得

・不動産所得の損失を他の所得と損益通算
 日本の税法では木造住宅の法定耐用年数を22年としており、法定耐用年数の全てを経過した中古の木造住宅を取得した場合には、4年間(簡便法の場合)で減価償却することができることになっています。そのため、築25年の中古住宅を1億円(土地2,000万円、建物8,000万円)を取得して賃貸するならば、4年間にわたって年間2,000万円(=8,000万円÷4年)の減価償却費が計上できることになります。

 そして、例えば賃料収入が年間600万円、減価償却費以外の経費が100万円だとすれば、年間の損益は、賃料収入600万円-減価償却費2,000万円-その他の経費100万円=▲1,500万円(損失)となって、1,500万円もの損失を他の所得と通算させることができます。

 この結果、55%の税率が適用されている富裕層であれば、年間825万円(=1,500万円×55%)もの節税ができることになります。

・住宅の譲渡による所得
 ところがこの方法では、上表のように5年目以降は減価償却費が0円になって大きな税額が発生するようになってしまうため、「なんだ5年目以降はたくさん税金を支払うことになるのか…」と思われるかもしれませんが、この方法のポイントは減価償却が終了し、分離長期譲渡所得(土地や建物の譲渡所得のうち、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えている場合の譲渡所得)として譲渡できるようになったら、住宅を譲渡してしまうことにあります。

 「木造住宅であってもメンテナンスができていれば価格が下がりにくい」という米国の不動産事情を背景に、購入価額と同じ1億円で譲渡することができたならば、8,000万円もの譲渡益が発生することになりますが、日本の税法では分離長期譲渡所得の税率は20%とされているため、税額は1,600万円で済むことことになります。

 その結果、不動産の賃貸と譲渡による税金をまとめてみると、3,000万円もの利益(不動産の損失5,000万円、譲渡益8,000万円)を得たにも関わらず、税額は反対に1,150万円も減少することになりました。

 令和2年度の税制改正

 ところがこのように、儲かっているにもかかわらず税額が減少するというのはやはりおかしいことで、この節税スキームは2020年度の税制改正で取り上げられてしまい、2021年以降は海外の中古建物の減価償却で発生した損失は生じなかったものとみなすとことになりました。

 先ほどのケースで言いますと、毎年2,000万円もの多額の減価償却費を計上することによって4年間にわたって損失を発生させて節税メリットを享受できたわけですが、「損失が無かった」ものとみなされてしまうため、節税メリットが享受できないことになります。

 なお、法定耐用年数や見積法(一定の書類を確定申告書に添付した場合に限る)で中古不動産の減価償却費を計算している場合には、このこの税制改正は適用されないことになっていますが、その場合には多額の減価償却費を計上することが難しくなるため節税効果は限定的なものになるものと思われます。

※この記事の内容は、公開時の法令等に基づくものです。公開の時期については、記事の冒頭でご確認ください。

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