新型コロナウイルス感染症による役員報酬の減額

新型コロナウイルス感染症による役員報酬の減額

 こんにちは!市ヶ谷、九段下の税理士たちばなです。今日は新型コロナウイルス感染症に関連して役員報酬を減額した場合の取り扱いをわかりやすく解説したいと思います。

 4月7日に新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が発出されて約1カ月が経過しますが、業績の悪化による役員報酬の減額を検討されている経営者の方々もいらっしゃると思いますので、役員報酬の減額についての法人税法の取り扱いを解説したいと思います。

業績悪化による役員報酬の減額

 法人税では役員報酬の額を事業年度の途中で改定した場合には、定期同額給与に該当しないとして、「役員報酬の一部又は全部が損金として認められない場合がある」という話を聞かれたことがある方も多いと思いますが、業績悪化による改定のであれば、事業年度の途中で役員報酬を減額したとしても、支給した役員報酬の全額を損金に額に算入することが認められています。

 ところが一口に「業績が悪化」と言われても、具体的にどの程度まで悪化した場合のことを言うのか判断に迷うところだと思います。そこで参考になるのが、国税庁が平成20年12月に公表した役員給与に関するQ&Aで、このQ&Aでは「通常、業績悪化改定事由に該当すると考えられる」ケースとして以下のものを挙げています

業績悪化改定事由の例示 (役員給与に関するQ&A[Q1-1])
<業績が悪化した場合>
・株主との関係上、役員としての経営責任から役員給与を減額せざるを得ない場合
・取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議において役員給与を減額せざるを得ない場合
・取引先等からの信用を維持・確保するために経営状況の改善計画にや役員給与の減額が盛り込まれた場合

 また、現時点では業績が悪化していなくても、業績の悪化が不可避な場合として次のようなケースでは、業績悪化改定事由に該当すると考えられるとしています。

業績悪化改定事由の例示 (役員給与に関するQ&A[Q1-2])
<業績の悪化が不可避と認められる場合>
・売上の大半を占める主要な得意先が1回目の手形の不渡りを出したため、売上の激減が避けらない場合

国税庁より公表された「当面の税務上の取扱いに関するFAQ」

 ところで上記のQ&Aは、今回の新型コロナウイルス感染症のような事態を想定して作られたものではないため、今回の新型コロナウイルス感染症による業績悪化をそのまま当てはめて判断することは難しいかもしれません。

 そこで、国税庁は4月13日に当面の税務上の取扱いに関するFAQを公表し、今回の新型コロナウイルス感染症での業績悪化改定事由の例示を挙げています。

業績悪化改定事由の例示 (当面の税務上の取扱いに関するFAQ 5-問6、問7)
<業績が悪化した場合>
・業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合
<業績の悪化が見込まれる場合の例示>
・経営環境が著しく悪化したため役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避な場合

 上記のケースはあくまでも例示であるため、これらのケースにそのまま該当しなくても、今回のコロナウイルス感染症により著しく業績が悪化している(悪化が見込まれる)場合には、業績悪化改定事由に該当するものと思われます。ただし、判断に際しては事前に税理士などの専門家に相談するようにしてください。

 なお、「業績の悪化が見込まれる」として役員報酬を減額する場合には、その後、幸いにして想定ほど業績が悪化しなかったということも考えられます。したがって、後々の税務調査で「どうして役員報酬の減額を判断したのか」を説明できるように、役員報酬の減額を判断した時点における経営環境、判断したに至った経緯などを記録した資料を保存しておき、説明を求められた時にスムーズに説明できるように準備しておくことが大切です。

※この記事の内容は、公開時の法令等に基づくものです。公開の時期については、記事の冒頭でご確認ください。

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