租税条約とは?

租税条約とは?

 こんにちは!市ヶ谷、九段下の税理士たちばなです。今日は租税条約とは何かについてわかりやすく解説したいと思います。

 我が国での租税は租税法律主義に基づいて賦課されるため、それぞれの税金には当然のことながらその根拠として「国税通則法」「所得税法」「法人税法」「地方税法」などといった法律があります。ところが経済取引が国境を超えるようになると国際的な「二重課税」や「脱税」に対して国内法だけでは十分に対応しきれなくなってくると、国家間の租税に関するルールとして租税条約が締結されるようになってきました。

 グローバル企業の税務に携わっていると日常的に租税条約に関わる機会もありますが、国内取引が中心という企業の場合には「租税条約」という用語自体あまり聞きなれないかもしれません。ところがグローバル化が叫ばれて久しい現在では、そういった企業であってもある日突然「外国人を日本に招聘する」なんてケースもあるかもしれませんので、「租税条約とはなにか?」について解説したいと思います。

租税条約の役割

 日本の法人税法では内国法人は全世界の儲けに対して法人税が課税されることになっているため、内国法人がたとえ海外事業で利益を得たとしても日本の法人税が課税されることになっています。このことは所得税法でも同様で、日本の居住者であれば全世界所得に対して所得税が課税されることになります。

 ところが、海外の国々からすると「日本企業(日本の居住者)であっても自国で儲けたのだから自国で納税して欲しい」ということにもなるでしょう。そして、それらの国々でも法人税や所得税が課税されてしまうと、結果として日本と海外で二重に課税される結果になってしまいます。

 このような二重課税を排除するための一つの仕組みとしては法人税及び所得税ともに「外国税額控除」制度があるのですが、それとは別に国家間で二重課税を回避するためのルールとして租税条約があります。租税条約は「二重課税の防止」だけではなく「国際的な脱税の防止」も目的としているのですが、財務省によると2020年3月1日現在、日本が租税条約を締結している国や地域は136に及びます。

米国人教授を招聘した場合

 筆者は以前グローバル製薬企業での税務に携わっていましたが、そのような企業では海外の大学教授を日本に招聘して講演をしてもらうケースが多くありました。そして、例えば米国の大学教授を日本に招聘して講演してもらうケースを所得税法に当てはめて考えると、大学教授の講演活動は人的役務の提供(所得税法第161条第1項第12号イ)に該当するため、日本で所得税が課税されることになります。

 ところが、日米租税によると「一方の締結国(米国)の企業(個人を含む)の利得に対しては」、日本国内の恒久的施設を通じて得たものでない限り、「当該一方の締結国(米国)においてのみ租税を課することができる」とされているため、所得税法とは反対に米国の大学教授に対して日本の所得税は課税できないということになります。

 つまり所得税法と租税条約とで言っていることが矛盾しているのですが、このような場合には国家間の約束である租税条約が優先されるため、米国の大学教授に日本の所得税は課税できないという結論になります。このことは反対に日本の大学教授が米国で講演する場合でも同様です。

第七条
1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一 方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場 合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

日米租税条約

租税条約の適用を受けるための手続き

 租税条約を適用するにあたって気を付けなければならないのが手続きです。一般的には支払日の前日までに支払者を通じて「租税条約に関する届出書」を支払者の所轄税務署に提出しなければならないことになっており、上記の大学教授への報酬では、報酬支払日の前日までに届出書を提出していない場合には、所得税の源泉徴収が必要になってきます。

 なお、近年では租税条約の適用を受けるために「特典制限条項」が付されることが多くなっており、特典制限条項が付されている場合には租税条約に関する届出書とともに「特典条項に関する付表」や「居住者証明書」などの書類も合わせて提出する必要があります。

※この記事の内容は、公開時の法令等に基づくものです。公開の時期については、記事の冒頭でご確認ください。

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