住民税は遅れてやってくる

 これまで外資系の製薬会社で勤務しながら税理士としても活動をしていたのですが、9月末をもって会社を離れ、100%税理士業に専念することになりました。ということで今月の25日に会社から最後の給与を受け取ったのですが、手取り額がなんとたったの83,148円でした。

 「おい!こんな金額でどうやって生活しろと言うんだ」と文句の一つも言いたくなりそうですが、これには住民税が時間差で課税されるという理由がありました。

所得税と住民税とでは課税されるタイミングが違う

 会社員の方が受け取る給与からは所得税(国税)と住民税(地方税)という二種類の税金が天引きされますが、実はこの二つの税金は似ているようで天引きされるタイミングが全く違います。

所得税:当年の給与に対する所得税は当年の給与から天引きされる
住民税:当年の給与に対する住民税は翌年6月~翌々年5月の給与から天引きされる

 ベテラン社員になると忘れてしまっているかもしれませんが、新入社員の頃は給与から住民税が天引きされなかったのですが、2年目の6月に住民税の天引きが始まってからは手取り額が少し減ったはずです。このように住民税は時間差で給与から天引きされるのですが、この時間差があるため社員が退職した場合にはちょっとした問題が発生することがあります。

 例えば、2018年1月~12月分の給与に対する住民税は2019年6月~2020年5月に天引きされるはずですが、私のように2019年9月に退職して、その後どこの会社にも再就職しない場合、2019年10月以降は給与から住民税を天引きすることができなくなってしまいます。また、2019年1月~9月分の給与に対する住民税は本来2020年6月から天引き開始ですので、こちらについても天引きできません。

退職した年の住民税

 このように会社を退職して再就職しなかった場合、給与から住民税を天引きすることができなくなりますが、だからといって住民税を納めないでも良いとはなりません。では、退職した年の住民税をどのように納付するかというと、次の二つの方法があります。

1.退職時(最後の給与から)にまとめて会社に天引きしてもらう方法
2.退職者が個人で納める方法

 どちらの方法が適用されるかについては、1月~5月に退職した場合は 1.の「退職時にまとめて会社に天引きしてもらう方法」になるのですが 、6月~12月に退職した場合は退職者が任意に選択できます。

 私の場合は9月末退職のため、2.の「退職者が個人で納める方法」も選択可能だったのですが、1.の「退職時にまとめて会社に天引きしてもらう方法」を選択したため、2019年10月~2020年5月に天引きされるはずだった住民税が、2019年9月に支給された最終給与からまとめて天引きされて、手取り8万円程度になってしまったわけです。

退職した翌年の住民税

 最終給与から住民税がまとめて天引きされた場合、それで住民税の納付が完了したかと言えばそうではありません。私のケースで言うと、まとめて天引きされたのは2018年の給与に対する住民税だけですので、2019年1月~9月までの給与に対する住民税を別途納付しないといけません。具体的には、2020年に役所から納税通知書が届くはずですので、納付書を使って2020年6月末、8月末、10月末、2021年1月末に納付することになります。

 住民税は時間差で課税されるため、納税通知書は忘れた頃に届きます。退職後も安定的な収入があるという方はあまり問題ないかもしれませんが、引退して収入が大幅に減る方にとっては住民税が遅れてやってくるということを知っておくことが大切です。

外国移住すれば住民税がかからない?

 会社退職後に海外の会社に転職されたり、南の島のリゾートに移住してのんびり過ごそうなんて考えている方もいらっしゃるかもしれません。このときに少し考えないといけないのがやはり住民税でして、それは地方税法で住民税の賦課期日が1月1日と定められており、1月1日に住民でなければ住民税が課税されないことになっているからです。

 私のケースでいえば、 2019年中の収入に対する住民税は2020年に課税されますが、2019年12月31日までに日本を出国して海外で新たな生活を始めていれば、2019年にどれほど多額の収入があったとしても住民税は課税されません。私はこれから税理士として頑張って働かないといけないので、そんなことを考える必要はありませんが、引退後に住民税の節税も兼ねて海外のリゾートでのんびりと生活なんてうらやましいですね。

※この記事の内容は、公開時の法令等に基づくものです。公開の時期については、記事の冒頭でご確認ください。

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