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役員報酬をどうやって決めていますか?

 お客様から役員報酬の金額をどうやって決めたら良いか相談されることがあります。役員報酬は職務内容や会社の業績、同業他社の状況などから総合的に判断して決めれば良いのですが、そうは言ってもオーナー企業の場合は株主などを気にせずに自由に決めらるだけに迷ってしまうこともあると思います。

不相当に高額な部分は損金にならない

 役員報酬を決めるときに気をつけないといけないのが過大役員報酬です。これは不相当に高額な役員報酬は法人税の計算上損金(経費)にならないというルールで、例えば毎月150万円の役員報酬を支給していても100万円までが相当な金額で、残りの50万円が不相当に高額な部分だと判断されれば100万円までしか損金になりません。

 税法がこのようなルールを設けている理由は、特にオーナー企業の場合、役員報酬をオーナーである社長などの裁量で自由に決められるため、過大な役員報酬を支給して租税回避を図ることができるからとされています。何をもって不相当に高額かには次の二つの方法によって判断され、どちらか一つにでも該当すれば過大役員報酬とされてしまいます。

(1)形式基準による過大役員報酬の判断
  定款の定めや株主総会決議などを超えて役員報酬を支給した場合
(2)実質基準による過大役員報酬の判断
  職務内容や業績などから判断して過大な役員報酬を支給した場合

役員報酬と税負担

 理屈はこれまでにして、ここからは社長が全株式を保有している架空の中小企業を例に、役員報酬の金額がどの程度税負担に影響を及ぼすのかシミュレーションをしてみたいと思います(前提条件は「東京23区に所在する資本金1,000万円の株式会社。社員数は5名、厚生年金と協会けんぽに加入、社長の報酬と社会保険料会社負担分を控除する前の税引前利益は1,000万円、 社長の年齢は50歳、過大役員報酬は考慮しない」です)。

 社長報酬を月額20万円から100万円まで10万円刻みで増やしてシミュレーションしてみると、社長負担額(所得税+個人住民税)と会社負担額(法人税等)は次のような結果になりました。

 20万円から70万円あたりまでは負担額が減少しましたが、80万円からは増加に転じています。これは社長報酬70万円のあたりで会社が赤字になってしまったため(社長報酬+社会保険料会社負担額が税引前利益の1,000万円を超えたため)、それ以上社長報酬を増やしても法人税等の節税効果が得られなくなったことと、社長報酬が増えるにつれて社長の所得税率が上がったことが主な原因です。

社会保険料も考慮した場合

 先ほどの例では社長と会社の税負担だけで比較してみましたが、社長や会社が負担するのは税金だけではなく社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)もありますので、社会保険料も考慮してシミュレーションしてみると次のような結果になりました。

 この場合、税金だけのシミュレーションとは違って社長報酬を増やしても会社負担額があまり減らなくなりました。これは会社の利益が減ることによる法人税等の負担減の半面、会社が負担する社会保険料が増加するためです。

 この結果だけ見ますとこの会社の場合、役員報酬が少ない方が社長と会社の合計の負担額が少なくなるように見えますが、将来の配当金のことまで考慮するとそうとも言い切れません。役員報酬が少ないということは会社の内部留保が増えるということですので、将来どこかのタイミングで配当をすることになり、株主である社長に税負担が発生するからです。

税金+健康保険料で比較した場合

 ところで、厚生年金保険は納付した保険料に応じて将来受け取れる給付が変わってきますので、税金や健康保険料と同列に負担額にだけ焦点をあてて語るのは正しくないかもしれません。そこで、厚生年金保険料を考慮せずに、税金と健康保険料の負担額だけでシミュレーションしてみると次のような結果になりました。

 この場合、社長報酬額が20万円から70万円くらいまではあまり大きな違いがありませんが、これは社長報酬額増による節税効果と健康保険料の増加がある程度均衡しているためです。

 先ほど説明したとおり、内部留保を増やし過ぎると、将来受け取る配当金に税負担が発生するため、そこまで考慮すると社長報酬額60万円から70万円あたりが社長と会社にとって最も負担が小さくなる金額かなと思います。

早い段階での負担見込み額の確認

 今回の記事では社長一人でシミュレーションしてみましたが、実際には社長の奥様が専務をしていたり、外形標準課税の対象会社であったり、もう少し複雑な場合も多いと思います。

 役員報酬は最初に申し上げたとおり、職務内容や会社の業績、同業他社の動向などから総合的に判断して決めるべきですが、税金や社会保険料の負担額はやはり気になるところだと思いますので、参考情報として事前に税理士にシミュレーションをしてもらい、早い段階で負担見込み額を確認しておくことは有用なことだと思います。

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